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「解放老人 認知症の豊かな体験世界」の出版

「解放老人 認知症の豊かな体験世界」の出版
野村進氏によるルポタージュ作品「解放老人 認知症の豊かな体験世界」が講談社より出版されました。この作品は2010年から2014年まで、当法人の佐藤病院第3病棟を取材したうえで、第3病棟を舞台に書きあげられたものです。興味のある方は是非ご一読ください。

以下、「BOOK」データベースより


 

認知症=不幸なのか?

「認知症が進むにつれ、がんの痛みを感じなくなる。死に対する恐怖とも無縁になる。末期がんにも苦しまず、安らかに永眠する。これは、私ではなく、認知症の研究や治療、介護、看護にあたってきた専門家たちがよく口にする現実である。一般には、ほとんど知られていない事柄かもしれない。」(著者より)

認知症を”救い”の視点から見直す。

2025年には730万人に達する可能性があるともいわれる認知症患者(厚生労働省調べ。最多の場合)。『救急精神病棟』『脳を知りたい!』で知られる著者が、重度認知症治療病棟のお年寄りたちに長期間密着。この難病をまったく新しい角度から見つめた画期的なルポ。

(内容)
つげ義春の名作「ねじ式」も顔負けの
シュールな幻想を語ってやまないハナさん。
すきあらば病棟からの脱出を狙いつづける源五郎さん。
車椅子を両手でこぎまわりながら、悪罵と怨嗟(えんさ)のかぎりを叫びつづける徳子さん。
一日中、病棟の中をほぼ決まったコースで歩きまわる勘平さん・・・。

「なんと個性的な人々であろうか。
山形県南陽市にある重度認知症治療病棟での取材を始めてすぐ、私はそこにつどう人々の圧倒的な存在感に目を見張らされる思いがした。(中略)認知症の進行とともに、罹患者の内面から、常識や世間体や煩雑な人間関係といった余分なものが削ぎ落とされ、いわば”地肌”があらわになる。それは、私たちから見れば、ときに目をそむけたくなったり見るに忍びなかったりするものであろうが、その人が秘めていた個性の核心であるに違いない。」(「あとがき」より)

 

(事前にゲラを読んだ、ある読者の感想)
元気だった両親が年を重ねるにつれて、耳が遠くなったり、ちょっと前の出来事を完全に忘れていたりして、「もしかして・・・認知症かな」と思うことが多くなりました。そういうことを考え始めると、正直暗い気持ちになっていたのですが、この本を読んで、少し不安が和らいだような気がしました。親が認知症になるのは怖いです。でも、もしそうなっても、落ち着いて対応できそう、たとえば、親が自分のことを忘れてしまったり、時には攻撃的になったとしても、「うんうん」と優しく接することができるような気がしました。

解放老人 プロローグ
第一話  なめる人
第二話  ファンタジー
第三話  待つ男
第四話  仕事の痕跡
第五話  もの盗られ妄想
第六話  記憶地獄
第七話  長老の知恵
第八話  配偶者
第九話  男女の関係
第十話  花火
第十一話 家族
エピローグ

著者紹介
著:野村進(ノムラススム)
野村/進
1956年、東京都生まれ。上智大学外国語学部英語学科中退。78~80年、フィリピン、アテネオ・デ・マニラ大学に留学。帰国後、『フィリピン新人民軍従軍記』で、ノンフィクションライターとしてデビュー。97年、『コリアン世界の旅』で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞。99年、『アジア新しい物語』でアジア太平洋賞を受賞。現在、拓殖大学国際学部教授もつとめる。主著に『救急精神病棟』『日本領サイパン島の一万日』『千年、働いてきました――老舗大国企業ニッポン』。近著は『千年企業の大逆転』